2017年のワーキングセミナーでの白川医師の講演をご紹介します。
今回は「私の在宅医療」というテーマにしてもらいましたが、これからの在宅をどうしていくのかということよりも、(これからの在宅は僕がやっていく時代ではないので、次世代の人に考えていっていただきたいと思っています)これまで自分がやってきたことを自分なりに総括すると言いますか、割と言いたい放題、勝手放題に言わせてもらおうと思っています。
その前に一言、先ほどのひまわりの会や若年性認知症の患者さんは情報に飢えていると言いましょうか。ご本人・ご家族がいろいろな問題を抱えておられても、たまたま「ひまわりの会」に出会ったり、「あんちゃんの店」に出くわすことができれば繋がりを持っていくことができるのですが、出会えなければ悩みを抱えたままになります。高槻市でも、まったく知らない方が多いと思います。
実は先日、高槻市社会福祉協議会の傘下にある介護者家族の会で講演をする機会がありました。そこに参加されている方に聞いても、ほとんど「ひまわりの会」の存在を知りません。家族の会は認知症の方だけではないのですが、圧倒的に多くは認知症の在宅患者さんを抱えた方々なのに、基本的にご存じありません。社会福祉協議会の方もあまり知らなかったと思うのです。地域包括とか事業所の方もたくさん来られていたのですよ。その方達に聞いても、ほとんど知らないということでした。
ところが、それは役所とか地域包括の方たちだけではなくて、例えば認知症専門外来を標榜されている院所や医療機関でも同じです。患者さんや若年性認知症を疑われた方は、家族の方や周りの方に勧められてそういう「専門医」を受診されると思います。検査と治療は始まるけれども、認知症の患者さんやご家族の生活をサポートされる所はほとんど紹介されない。例えば、待合室などで「ひまわりの会」のチラシが貼っているわけでもない。「あんちゃんの店」が紹介されているわけでもない。これが現状です。
認知症患者が増え、社会的テーマになってくれてニーズが増えれば認知症専門外来をやるし、いろいろ検査だけやって、ドネペジルなどの薬を出すということだけをやっている。そういう認知症専門外来が増えてきたのですけれども、私は「にわか専門医」と呼んでいます。
セミナーを始めた出発点
このワーキングセミナーをやっていこうという最初の出発点は、認知症患者さん・ご家族を現場で支えているが、普段は一箇所に顔を合わすことができない人々が交流して、お互いに情報交換をしていこうということでした。このセミナーで情報交換したこと、「こういうことがあるよ」ということを自分の所にもし相談に来られたら伝えていく、広げていくことをしていっていただきたいと思います。皆が互いに、悩み事をここで包み隠さず、恥ずかしがらずに出し合って、いろいろ応えていくということをやりたいと思っていました。
毎回「ひまわりの会」の活動を紹介していただいているのは、そういう会について一人でも多くの方が知っていたら、近くに若年性認知症の方や悩まれている方がいても、「こういう所があるよ。行って相談してみたら」という一言をかけることができると思うからです。もっともっと地域に活動の存在を広めていただきたいと思っています。
そういう情報を持つこと、まずは情報を共有していただきたいと思うのです。そのうえで情報を発信していくこと、今度は次の世代に引き継いでいくこと、それが課題だと思います。実践で頑張っている人、その人たちは忙しい、24時間身を粉にして働いているので手が回らない、そういう人たちの活動やそういう人たちの持っている課題などを発信していく、情報を共有化していくことは大切です。
例えば認知症のサポーターや、ひまわりの会のサポーターの募集にしろ、自分が直接サポートに行けなくても、ひまわりの会の活動に参加できなくても、周囲に「サポーター募集の呼びかけをやっているよ」と知らせることはできます。また、そういう会の存在を知らせることはできると思います。そういう情報を現場で働く、われわれの側に立った情報発信というのを、何とか最初は手作りでいいと思いますし、口コミでもいいので始めて行くことが大切です。そして将来的には、情報の発信=交換ができるシステムを作っていかなければならないと思います。
官製の情報だけではなかなか伝わっていかないと思います。さきほどお話しした介護者家族の会に参加させていただいたとき、後で集まった人たちに雑談の場で聞いたことでは、みんな情報から孤立されています。社協からも家族会などの情報が来ないから全然わからない。わからないまま、家で介護を続けておられるから情報に触れることはないわけです。そういう方々の間に充分に情報を伝え交換して行きたい。ちゃんとしたシステムを作りたい。どういう風にやっていったらいいのかなと、皆さん一緒に考えてください。私も考えます。
第2回に続きます。